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キラプリおじさんと幼女先輩

 マジで自信なくした……>挨拶

 感想記事、第3弾はこちら、「キラプリおじさんと幼女先輩」です。

キラプリおじさんと幼女先輩 (電撃文庫)

 面白過ぎた……、てか僕の書きたかったこと全部やられた感すらある

 遅ればせながら、今頃になって各所で絶賛されている「キラプリおじさんと幼女先輩」を読んだんですけど、とても面白かったので記事を書きます。

 タイトルの時点で相当目を引きますけど、とりあえず公式のあらすじはこちら。

第23回電撃小説大賞《銀賞》受賞作! 全国紳士に捧ぐS級レアラブコメ!

女児向けアイドルアーケードゲーム「キラプリ」に情熱を注ぐ、高校生・黒崎翔吾。親子連れに白い目を向けられながらも、彼が努力の末に勝ち取った地元トップランカーの座は、突如現れた小学生・新島千鶴に奪われてしまう。
「俺の庭を荒らしやがって」
「なにか文句ある?」
街に一台だけ設置された筐体のプレイ権を賭けて対立する翔吾と千鶴。そんな二人に最大の試練が……!
クリスマス限定アイテムを巡って巻き起こる、俺と幼女先輩の激レアラブコメ!

  この完成度で新人賞っていうんだから驚きです。ワナビとしては実力差をありありと見せつけられて自信なくしました。

 第一、これで電撃大賞の〈銀賞〉?〈金賞〉の間違いじゃなくて?

 そりゃ〈大賞〉とかはその賞の看板なわけだから、こういうキワモノラブコメには与えられないのかもしれないけど、だけどそれにしたって銀賞って、、、改稿で化けたってことですか、、、?

 ・・・

 とまあ、それはさておき。

 さてさて、幼女先輩ですよ幼女先輩!

 もう最高に面白かった。どう面白かったのか以下箇条書きで語っていきます。

(1)テーマ

 まずテーマが好き。僕が書きたかったテーマ。さきにやられてほんとに悔しい。

正直テーマなんて受け取り手の感じ方次第でいかようにも変わりますが僕がこの作品から感じたテーマは、『好きなものを好きと言うことの尊さ』です。

 この物語はキラプリ、つまり女児向けアーケードゲームについての話です。こういった女児向けコンテンツを楽しむオトナのユーザーはしばしば「〇〇おじさん」と呼ばれ、普通の人たちからは「いい歳して…」と忌避される対象になります。

 だけど、だけどです。

 なにか物事に熱中している人間は、その熱中しているコンテンツのいかんに関わらず尊敬されるべきで、コンテンツによってバカにされたりするのは違うと僕は思います。

 ラノベが好き、アニメが好き、キラプリが好き、しばしそういった趣味は、世間では異常であるとされ、そういったコンテンツに理解のない一般の人間からは眉をひそめられることになります。

 だけど、ラノベが好き、声優が好き、アニメが好き、etc、、、そういった趣味は東野圭吾が好き、嵐が好き、スポーツ観戦が好き、そういった趣味とどこが違うというんでしょうか

 ラノベ東野圭吾は同じ小説だし、声優と嵐はどちらも同じアーティストだし、アニメもスポーツ観戦もただ鑑賞するだけのものです。

 つまりはみんな、偏見を持っているだけだと思うんです。

 そして偏見とは、ただ自分と違うというだけで、ひとたび所属するコミュニティーが違えば180度変わるものなのに、なのにそれだけのために「好き」という純粋な気持ちが否定されるのはおかしな話だと思います。

「好きなものを好きと言いたい」「好きなものを分かち合いたい」そういった純粋な気持ちだったり、偏見と向き合うことだったりが書かれた名作だと思います。

(2)題材

題材が勝ち確すぎた。

富士見ファンタジア大賞大賞作のお母さんだったり、MF文庫J新人賞最優秀賞の「僕の知らないラブコメ」だったり、アイディアの時点で面白い題材というのがあります。

 本作は間違いなくこれ。だって女児向けアーケードゲームというニッチな題材で、真面目な熱血ラブコメする時点で笑えると思いませんか。上質なコメディだと思いませんか。

 それに「女児向け」ですから自然とロリものになりますよね。あの名作「ロウきゅーぶ!」に引けを取らない傑作になると思いませんか。

 もうほんとずるい。

(3)キャラ

 主人公がかっこいい。

 あれ、この主人公女児向けゲームやってんだよなあ?なのにどうしてこんなイケメンなんだよ!?って感じです。

 たぶんそれはこの主人公が女児向けゲームに真剣に取り組んでるから。

 真摯にストイックにキラプリに向き合うもんだから、スポーツに取り組むアスリートのように思えて尊敬できるんですよね。スポコンものの文法で主人公がイケメンになってる。

 それにメインヒロインもかわいい。

 ツンデレ毒舌系のテンプレヒロインのようにも思えますが、人見知り属性やロリ属性が良い感じにギャップを生み出してます。それに彼女のキラプリに対する想いが、このキャラの背後にある歴史を厚いものにしていて、ともすれば薄っぺらいテンプレキャラに成り下がりそうなものを阻止してる。

 あと、この二人の関係性がうまい。

 同じキラプリプレイヤーのライバルとして普段は憎み合う二人ですが、それでも同じコンテンツを楽しむ仲間としてお互いを信頼し合っている関係性が心地いい。

 以上、今言ったこれらのことは、あくまで王道の域を出ることはないですが、王道であるが故にそれを突き詰めた本作のキャラたちはなんとも見本的な良いキャラたちだと思いました。

(4)構成

 無駄のない、よく考えられた展開だと思いました。

 最後、二人でのキラプリ協力プレイの場面がこの小説の山場だと思うんですが、そのプレイ中に、いままで二人が積み重ねたことが全部生かされていく展開は読んでいて気持ちが良かったです。

(5)文章力

 文章うまかった。これ新人か?って感じ。

 読んでいてリズムが詰まるところもなかったし、会話も自然でやり取りは面白く、情景描写もしっかりされてて映像が自然に浮かび上がる。

 それに最後の山場、二人の協力プレイの場面は文章が厚くなっていて、山場にふさわしい読み応えがあり文章力の爆発って感じ、凄い。

 文章を厚くして山場を演出するのって難しいと思うけど、これはそれが成功していて驚く。個人的にはこういった、文章で山場を演出する系の頂点は、一肇の『少女キネマ』だと思ってたけど、それくらいに盛り上がったから凄い。

 かえって自分の文章力は、、、ほんと凹みますよ。

(6)イラスト

 なんと本作の絵師さんは新進気鋭のイラストレーター『MikaPikazo(みかぴかぞ)』 さん!! サイコー!

 ・・・

 というわけで『キラプリおじさんと幼女先輩1』でした。

 まとめると、目を引く特異な題材と王道展開を組みわせた教科書的(いい意味)作品だと思いました。

 さすが電撃大賞受賞作、、、! 凄すぎです。ではノシ