月刊基地moratorium

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『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術13巻』感想

  お酒も入っていい気分なのでネタバレ全開で感想を書きます。

 皆さんは異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術13巻、読みましたか?

 僕は読みました。本当に面白かった。

  ただ、ここまで異世界魔王を読んできた読者にとってはシリーズ史上最も辛い巻だったんじゃないですかね。僕は読んでいて辛かったのですが。

 やっぱりこのシリーズって毎巻毎巻主人公一行がピンチに陥りつつも、廃ゲーマーである主人公ディアヴロがその圧倒的強さを発揮することで敵を倒し、ヒロインも助けて一件落着。ヒロインとの関係も進んで(ついでにエッチな展開もあって)嬉しいね、って感じだったと思うんですよね。

 要は「ヒロインがピンチに陥る」⇒「ディアヴロが物理的に敵を倒す」⇒「問題を解決する」って流れがあったと思うんですよ。でも13巻は違ったよね、っていう。

 13巻ではこのシリーズの主題ともいえるディアヴロの内面の問題に切り込んでいきましたよね。ラストの王宮騎士団に加入を求められるディアヴロのシーンとかさ!辛すぎる。

 このシリーズ、ディアヴロを除けば全員コミュ強なんですよ。ヒロインのレムとシェラも、考えてみればディアヴロと行動しているのが不思議なくらいのリア充側の人間じゃないですか。

 だからディアヴロも、レムやシェラを含めた周りの皆がディアヴロに王宮騎士団への加入を求めたときに「自分のレベルが高かったから必要とされただけで高レベルの集団が来たら協調性のない自分は必要とされないんだ」って孤独を感じてしまった。ディアヴロはよぅ、繊細な男なんだ…。

 なんなら王宮騎士団を率いるノア・ギブンにいたってはレベルが300なわけじゃないですか。ディアヴロのレベルは150だし、自分より格上の相手にお情けみたいにパーティへの加入を求められるって。ディアヴロのアイデンティティもあったもんじゃない。

 クルムが「ディアヴロが必要だ」っていうもんだから幸か不幸か話の中心になってはいるものの、クルムがそんなこと言い出さなきゃ皇帝倒すのにディアヴロは別に必要ないんじゃねって空気だし。そもそも弱すぎて皇帝に無視されてたし。

 今回の王宮騎士団加入の構図、僕には「クラスのカースト上位の人間が、先生に言われたから仕方なく修学旅行の班にボッチの僕を入れようとしてくる」みたいなものに思えて仕方なかった。てか絶対それを意図した書き方だった。トラウマがよみがえる。

 第一、このシリーズを13巻まで読んでいる時点で、読者は何かしらディアヴロに共感を覚える人間だと思うわけですよ。読者はディアヴロの、コミュ障ながらもそのゲームの腕前で強敵を打ち倒す姿に自分を重ねることでカタルシスを感じ、ここまでシリーズを追っかけてきたわけですよ。

 だとしたら今回の構図は辛かった。なんならディアヴロが一番辛かった。

 この王宮騎士団加入の件を通してディアヴロは成長したと思うけど、シリーズが始まって以来初めての敗北ともいえるんじゃないでしょうか。

 皇帝との戦闘で実質負けて、レベルで負けて、コミュ力でも負ける。

 いや~………。

 誤解のないように言っておくと面白いんですよ。いつもの異世界魔王のテイストから変えてきていて、ますますこのシリーズは面白くなってきた。

 ただ、辛かった。

 次巻で救われることを願いつつ14巻を待ちます。さて、いつになるのか……。

 

「ディアヴロ、俺だけはずっとお前の味方だからな」と思いながら読んでいた13巻の感想でした。