月刊基地moratorium

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ラノベでエロを書ける作家ってかっこいい

 ラノベでエロってのが重要なのです。

 僕は性行為なんかを小説でやられると激萎えする人間で、一般文芸なんかでそれはよく見るけれど、いまのいままで感情移入してた主人公が突然女性とそういう雰囲気になって事を始めたりすると「お前もそっち側の人間だったんか、お前は俺じゃなかったんか……」ってなってモテない僕としては一気に冷める。

 これが原因で一般文芸が苦手で、昔好きでよく読んでいた森絵都なんかが今では辛くて読めなくなってしまった。なんかさあ、辛いよね。小説の、それも一般文芸の主人公なんかは割と自意識に溺れていて、生き難い現実に四苦八苦する様は読んでいてとても共感できるんだけど、それなのに急に女性と事を始められると「童貞でもないのにそんなに苦しそうにするなよ、くそが」と、こう、胸の奥が苦しくなる。ああ、愛があれば幸せに生きていけるのに。愛をこの手に掴みたいよね、まあ無理か。はあ。

 翻って、ライトノベル。エッチなシーン、大好きである。

 なんでだろうな、これ。たぶん一般小説は3次元として捉えていて、ラノベは漫画とかエロゲとか、そういう2次元として捉えているからだろうなと思う。エロ漫画とかエロゲとか大好きだしな、僕。

 一般小説とラノベとの違いは何であるかとよく話に挙がるけど、僕は両者の違いって、「現実」を描いているか「理想」を描いているかだと思う。一般小説は3次元的で、いくらフィクションであっても、その話はどこかで起こりえるような地に足ついた話がだいたいで、一方ラノベはフィクションらしく、「こうあったらいいな」という願望を描いている。その願望の出し方が露骨だから、ラノベは下品で低俗なものだと思われがちなのかもしれないけれど。

 でも、僕はどうしようもなく好きなんだよなあ。転んだ拍子に胸揉んじゃったり、女の子に色仕掛けされたりするのが。ヒロインのネコミミをいじってエッチな感じになったり、ヒロインに「おっぱい、触っていいよ……」みたいに言われるのが。

 そういったラノベのエロシーンが好きです。ラノベには直接的で生々しい性行為がないってのも安心できるところだけど、どこかラノベのエロって少年漫画的な、青少年向けの健全なエロって感じがする。ラノベの対象年齢を考えれば当然のことだけど。

 僕にとってラノベでエロといえば「ハイスクールD×D」ってとこがある。中学のときに陸上部の後輩が、大会の会場から帰るバスのなかで読んでいるのを読ませてもらった。それが初めてのラノベだった。僕は乗り物酔いがひどくて、だからバスのなかで文字なんか読むことができないからしかたなく飛ばし飛ばしで挿絵だけを見たのだけど、どれもエッチなイラストばかりでごくりと喉を鳴らしたのを覚えている。あのころこういった二次元のイラストに触れた経験がなく、いわゆる萌え絵というのを生まれて初めて拝見したんだけど、不思議と嫌悪感というものはなくて「えろい!」とだけ思った。思えばこれが、後にオタクとなる才能の発露だったように思うけど、どうせなら別の才能がほしかったというのは、まあオタクになって救われたことばかりだから思わないで置く。

 話がそれたけど、とにかくそういったことがあったので、ラノベでのエロ表現については僕は寛容であったりする。そんでもってそういったエロシーンをふんだんに盛り込める作家というのは、なんていうか、プロ!って感じがして憧れるのだ。タバコなんかふかしながら、健全な青少年にちょっとしたエロを提供するのは、プロとしてあるべき姿のような気がする。そんで、僕もそんな作家になりたいなと思う。露骨なエロってネットでよくバカにされるけど、それでも純粋無垢な中学生には、ちょっとした大冒険って感じの、ドキドキそわそわものだと思うのだ。「ちょっとした大冒険」って矛盾した表現のようだけど、少年がエロと対峙したときの心境ってまさにそんなもんな気がする。てなわけで、家の裏の用水路でザリガニを釣らない現代の少年に「ちょっとした大冒険」を提供するためにも、俺はエロを書くぞ!

 そんなことを決意した、二十歳の初夏だった。